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NPO法人かわさき技術士センター

技術支援ニュース

No.82


2020年09月号


発行責任 NPO法人かわさき技術士センター

「コロナによるパラダイムシフト」
  かわさき技術士センター 副会長  佐野 芳昭

 新型コロナウイルスは世界規模のパラダイムシフトを引き起こしました。 (paradigm shift;当然のことと考えられていた物の見方や考え方、価値観などが劇的に変化することを意味しています)  4月の緊急事態宣言発出後、社会経済活動の自粛や在宅勤務などで、ZoomやTeamsなどのリモートミーティングの普及やテレワークが一般的になり、解説本も多々発売されました。
 コロナ禍そのものについては否定的な見方しかできないのですが、有効な治療薬やワクチンへの期待があるものの当分の間はコロナと付き合いながら経済活動を行うことになると思われます。
 一方、コロナショックはパラダイムシフトのポジティブな一面もあると思われます。 テレワークの一層の拡大により業務のデジタル化に拍車がかかり、DX(Digital Transformation)や働き方改革の推進がおこなわれることで、 生産性や業務効率の向上などに繋がることが期待されます。
 なお、2017年から政府主導で「テレワーク・デイズ」としてテレワークの全国的な普及活動が行なわれていて、有益な支援情報などが掲載されています。 (https://teleworkdays.go.jp/)

「タイムマシン経営考」
  技術士(化学部門) 本山 晃

 タイムマシン経営という言葉をご存知でしょうか?海外で成功したビジネスモデルをいち早く日本に導入し、先行者利益を狙う経営手法を言います。 90年代のネットバブル期にソフトバンクの孫社長が命名したとされ、Yahooやブロードバンドなどが代表例です。 海外とのタイムラグを利用し、あたかも未来を先取りしたように成功できたのです。
 “成功できた”と過去形にしたのには理由があります。 インターネットの普及で情報流通の速度が劇的に速くなり、タイムラグが縮小したため簡単に成功できなくなったのです。 タイムマシン経営はもう成立しないとの論調も増えています。
 ではタイムマシン経営はもう意味がないのでしょうか?“そんなことはない!”、と私は思います。 かつてのように簡単な成功は難しくても、仕組みや考え方は普遍的で有用だからです。 しかもタイムラグは国家間・市場間に限らずあらゆるところに存在し、視点を変えれば創り出すことさえできます。 先行事例や競合他社から学び、未来の市場や規制動向を読み切れば、強い技術や領域を自ら創出できるのです。
 例えば化粧品を例に取ってみましょう。 人体に直接使う日用品という商材の特性上、その原料は消費者の嗜好や、安全性・環境保全に関わる公的規制に大きく影響されます。 これらの変化には地域差があり、まさにタイムラグが日々発生しています。 例えば安全意識の高まりは、天然由来原料等の安心感が売りになることを示唆しています。 環境規制も同様です。 昨今、マイクロプラスチック対応や石油代替原料の利用の機運が世界的に高まっています。 前者はプラスチック使用量の削減・生分解性素材の使用、後者はバイオエタノールや代替天然原料の利用が模索されています。 コストや機能、仕様を満たす代替品探しは容易ではありませんが、ビジネスチャンスはあちこちに転がっているのです。
 重要なのは、環境変化を好機と捉え、タイムマシン経営的に先を読んで挑み続けることではないでしょうか? なぜなら、どんなビジネスも「違いのある価値の提供」こそが成功の秘訣だからです。
 しかもいち早く効率的に! 技術士は、多様な経歴と得意領域を持つ専門家です。 違いを素早く見極め、有利にビジネスを回す良きパートナーとして、お役に立てれば幸いです。    

「商業施設等における感染症換気対策の必要性について」
  技術士(機械部門) 白石秀樹

厚生省の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議で集団感染に共通する条件として、
①換気の悪い密閉空間 ②多数が集まる密集場所 ③間近で会話や発生をする密接場面を挙げています。 その中で「換気」は分かりにくいので自分の事業所や住居はどのように対策をしたら良いか戸惑っている方は多いと思います。

(1)感染経路:換気による対策を理解するには基本的な感染原因について知る必要があります。 感染経路には接触感染、飛沫感染、空気感染の3つが有り、 換気対策で予防できるのは飛沫感染と空気感染でこのようなエアロゾル粒子は3時間以上空気中に浮遊する場合もあります。 従って新型コロナウイルスは換気による対策が効果的です。

(2)換気方法:窓を開けて外気を取り入れる自然換気と機械換気があります。 機械換気の場合、必要換気量は一人当たり30㎥(ビル管理法基準)を確保するよう換気設備(換気扇、エアハンドリングユニット等)の設定をしましょう。 自然換気の場合換気量は一時間2回以上(30分に一回以上)必要で、できれば2箇所以上の開放部を設けると空気が流れやすくなります。

(3)業態別必要換気量:ビル管理法の基準を満たすための業態別の必要換気量を参考に示します。 居室の在室密度が大きいほど必要換気量(㎥/㎡・h)が相対的に増えます。

(4)空気清浄機の利用:浮遊粒子を捕集する空気清浄機にはフィルタろ過式と電気集じん式があり、室内空気を循環しながら機器内部で捕集する原理です。 しかし、ファン能力、捕集率などの能力が限られるため換気に比較するとウイルス濃度を低下させる能力は不十分です。

(5)まとめ:商業施設等においては最低の基準換気量 を満たすように専門家の助言を受けながら設備の維持 管理を継続する必要があります。 しかし、新型コロナ ウイルスの感染防止としての基本は「3密」を避ける ことです。 商業施設等においては、まずトップダウン による感染対策の体制を作ることが最も重要です。

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2019年度技術セミナー
かわさき新産業創造センター
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(16:00~18:00)
10月14日(水) IoT/ICT/DX 時代の革新的経営カイゼンへの挑戦
 技術士(経営工学部門・総合管理部門) 田中 弘一
11月18日(水) SDGsに取り組もう! ~経営に貢献する「三方良し」の環境活動~
 技術士(環境部門・総合管理部門) 田脇 康広
12月16日(水) 技術経営とマーケティングが導く新たな市場と顧客
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2020年 9月 1日発行  発行責任者:NPO法人 かわさき技術士センター 会長 磯村 正義
NPO法人 かわさき技術士センター URL:http://www.n-kgc.or.jp/ E-mail: info@n-kgc.or.jp

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