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NPO法人かわさき技術士センター

技術支援ニュース

No.81


2020年06月号


発行責任 NPO法人かわさき技術士センター

「新型コロナウイルスに思う」
  かわさき技術士センター会長 磯村 正義

 今年になって世界は未曾有の事態に直面しました。 「新型コロナウイルス」の蔓延です。 日本も毎日のニュースは新型コロナの話題ばかり、そして私たちの日常生活も在宅勤務や三密の回避など、 これまでに経験したことのない毎日になっています。
 そのような状況の中で、医療、行政、経済、そして「自粛警察」に見られる偏見・差別等の社会的問題など、日本が抱えている多くの課題が浮き彫りにされてきたように思います。 これらの課題をどうやって解決していくのか、昨今の現実を見ると私は決して楽観視できないのですが、しかしこの課題を克服しなければ日本の将来はありません。 「新型コロナウイルス」についてはわからないことも多く、全く根拠のないデマは別としても、学者によって意見が異なる場合もあります。 科学者・技術者にとって大事なことは「科学的に考える」ということでしょう。
 山中伸弥教授が「自分は感染症の専門家ではないが、科学者として発言しなければいけない」として積極的に活動されていることには頭が下がります。 私たちも技術士として、この状況の打開のためにするべきことがあるのではないでしょうか。
 例えば、現在多くの企業では当たり前になっているデジタル化、クラウド化について、保健所がいまだに手書き、FAXベースで業務を行っていることには私も驚きました。 特別定額給付金の事務についても同様です。 私たち技術士の持っている技術をもっと社会に役立てるチャンスがあるのではないかと思います。 またそのように尻を叩いていただければ幸いです。

「世界デジタルサミットを聴講して」
  技術士(情報工学、総合技術監理) 嶋田 弘僧

 6月8日、9日に開催された「世界デジタルサミット2020」を聴講しました。 例年は600人程度の会場で開催されますが、今年は新型コロナウイルスの影響でネット配信となり、延べ4万3400名が視聴したそうです。 今年のテーマは「5G and NEXT」で、国内・海外のITメーカの社長・CEOをはじめ13名の講演と3件のセッションが行われました。 それぞれの立場で講演されていましたが、複数の講演者に共通した内容が見られ、今後の技術の方向性が読めました。
 新型コロナウイルスの影響で人や社会が大きく変わり、これまで対面のコミュニケーションが中心でしたが、リモートへの移行が急速に進みました。 Zoomの利用者が4月のピーク時に1日当たり3億人に達し、わずか4カ月で30倍の規模に拡大しました。 デジタルトランスフォーメーション(DX)は2018年12月に経済産業省からDX推進ガイドラインが出されていましたが、コロナをきっかけにその重要性が改めて浮き彫りになり、導入が急速に進みました。
 次世代通信規格「5G」が本格的に普及すると社会や産業の構造変化をもたらします。 自動運転車が5Gで相互に通信しながら走行し、医療の現場では遠隔診療や遠隔手術が容易になります。 IoT機器が5Gでネットワークにつながり、大量のデータが高速でクラウドに送られます。 4Kや8Kの高精細な映像が低遅延で配信できます。 また、ローカル5Gにより、建設機械の遠隔制御や工場の自動化などの先進事例が紹介されました。 人工知能(AI)が様々な場所で活用されるようになります。 AIを搭載した自動運転車、AIを使った創薬事業、サイバー攻撃の検知、ビデオ会議における自動翻訳などの事例が紹介されました。 信頼できるAIであるためには、推論の根拠と理由を明確にする説明可能なAI、運用における信頼性を担保するAI品質、倫理的な要求に対応するAI倫理が求められます。
 中小企業にとって、5GやAIの技術は直接関係ないと思われがちですが、今後、社会に浸透し、誰でも手軽に利用できる形で提供されたり、知らず知らずのうちに使われていることになると思われます。 それに向けて5GやAIをはじめとするIT技術に関心を持っていただきたいと思います。

「これからの製造業」
  技術士(機械部門、総合技術監理部門) 庄司尚史

新型コロナウイルスの影響でWeb会議、在宅勤務、テレワークなどが話題に上っています。 今後の見通しは予断を許しませんが、働き方や生活スタイルの変化はコロナ後も定着していきそうです。
 ところで、コロナが経済に与える影響は甚大で、広範囲かつ長期間に及ぶことが心配されます。 よく2008年のリーマンショックのことが引き合いに出されますが、深刻さはそれ以上ともいわれています。 製造業、特に下請け部品メーカーなどにとっては厳しい状況なのではないかと思います。
 そのリーマンショック以降、コスト面から部品を海外から輸入する動きが日本中で強まりました。 国内の製造現場は規模の縮小や廃業などを余儀なくされ、生産量は低下しました。 仕事がなくなると人もいなくなり、技術の伝承ができないために技術力は低下していき、その影響は現在でも続いています。 その後、中国などでは人件費が上昇し、コストメリットがなくなりましたが、日本の生産能力が落ちているので、部品生産の国内回帰の動きになっていない状況のようです。
 一方、新型コロナで日本の技術力復活のチャンスが来たと考える部品メーカーの経営者もいます。
 製品を組み立てる大手メーカーは、リスク分散という観点でおそらく様々な仕組みを見直す必要に迫られます。 その時、サプライチェーンの日本回帰という選択肢があるのかどうかが問題です。
 では、日本の部品メーカーは何をすべきでしょうか。 現在は最新の設備により図面があれば高精度の部品が短時間で生産できるようになっています。 しかし一時的に国内に流れができたとしても、単なる部品生産だけにとどまれば再び世界のコスト競争に巻き込まれるでしょう。
 そこで、付加価値で差別化する必要があります。 それには単なるアイデアだけでなく、具体化する方法や手段が求められます。 重要なのは、システムの設計思想がどういうものか、構成部品には何が求められるか、などを理解し、さらなる性能向上の提案ができる技術力です。 それは短期的に獲得できることではなく、育成という視点から継続的に取り組む必要があります。
 現在、個人の価値観も仕事観も変わりつつあります。 従来から言われている「ものづくりの大切さや面白さを若い人たちに伝える努力」が、今こそ重要なのではないでしょうか。

お役立ち最新情報

[技術士によるセミナー] (現場経験に基づくホットな内容)

今年度も「KIIP 公益法人川崎市産業振興財団」との共催(技術)セミナー (於) KBIC かわさき新産業創造センター (16:00~18:00)を予定しています。
前年度は、7,9,10,11 月中旬(水)の 4 回にわたり、ビジネス・経営戦略、ものづくり 職場安全、 電気自動車用二次電池、3D-CAD 技術 etc. につき開催致しました。 本年度は 新型コロナウイルスの影響により、9/16、10/21、11/18 に開催予定ですが、 詳細は追って 下記 URL にてご案内させて頂きます。ご活用頂ければ幸いです。
https://www.kawasaki-net.ne.jp/
https://www.kawasaki-net.ne.jp/wp-content/uploads/2019/12/190701servicemenu.pdf

[支援事業] (申込先:川崎市中小企業サポートセンター)

ワンデイ・コンサルティング(無料) 原則随時です 企業に出向き緊急の課題を支援します。最大3回可能です。
専門家派遣(有料) 募集があります 費用は半額企業負担です。課題に対し最大12回の継続支援。
川崎市中小企業サポートセンターとは
中小企業を応援する総合的な支援機関で、主な支援事業は次のとおりです。
★総合相談窓口 ★専門家相談窓口 ★人材育成セミナー ★専門家派遣事業
★かわさき企業家オーディション ビジネス・アイディアシーズ市場」
TEL:044-548-4141 FAX: 044-548-4146 URL: http://www.kawasaki-net.ne.jp/
2020年 6月 1日発行  発行責任者:NPO法人 かわさき技術士センター 会長 磯村 正義
NPO法人 かわさき技術士センター URL:http://www.n-kgc.or.jp/ E-mail: info@n-kgc.or.jp

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